故郷の匂い 学生時代、仙台の下宿でのことである。 青森の友達が言った。 「リンゴの匂いがすると故郷を思い出すよ。 子供の頃、リンゴ畑で一日中過ごしたから。」 栃木の友は、 「そういうのってわかるなあ。俺はニラの匂いだ。 ちょっとかっこわるいけどね。」（笑） 「俺なんか油っすよ。家がバイク屋っすから。」 と、岩手の後輩。（大笑） そしてみんな、優しい顔になる。 「俺はワラだ。モミガラを焼く匂いだ。」 子供の頃、稲刈りを手伝わされた。 秋になると町中藁の匂いがした。 今はあまり匂わなくなってしまったが、たまにその 匂いを感じると一瞬にして、稲刈り後の田んぼと、 親父の後ろ姿が目の前に現れる。 思考が止まる。そして、 母親がにぎってくれた丸いおにぎりを食べたくなる。 匂いは知らぬ間に 心の奥底に故郷を染みこませる。
	Nikon F801 　AF Nikkor 35-135�o 遊佐町庄泉　2000.10